前回に引き続き、フリスコを使って修理作業を進めていきます。
今回も分解と清掃です。
ネックの分解と清掃
ネックの取り外し
ストラトタイプの場合は、ボディとネックがネジ4点で止められているボルトオンネックであることが多いようです。
ボルトオンネックって? >> エレキギター用語辞典「ボルトオンネック」
このギターも4本のネジをはずすだけでネックは取れます。
ネジをはずすと、ネックとボディが崩れるようにはずれてしまいますので、床に落としてしまわないように!
安定した場所ではずすようにしましょう。
ネックやボディを落としてしまうと、ボディのネックポケット横に亀裂が入ってしまいます。
また、ネックを力づくではずしたり、「てこの原理」を利用するようにしてはずすと、大体ボディ側に塗装割れが生じますので、優しくはずしましょう。
ネックポケット横は丁寧に扱っていても、なぜか塗装割れのようなヒビが入りがちです。
今回のギターには、塗装割れはありませんでした。
後でネックを取り付けるときも、ヒビがはいらないように注意したいと思います。
これでほぼ分解完了です。
これから、
となります。
次の作業に向けて、ボディのザグリやネックの接合部分などを、もう一度拭いておきましょう。
ネックの分解
ネックを取り外したら次は、ギターヘッドのペグをばらします。
私は各弦のペグを順番にはずして、1弦にあったペグは1弦に戻すようにしていますが、特に意味はありません。
6つとも同じ形であれば、1弦にあったものを6弦に取り付けても大丈夫です。
ペグにはいろいろな種類があります。
ペグって? >> エレキギター用語辞典「ペグ」
このギターのペグはそれぞれ、ヘッド後面の小さなネジ2つで取り付けられています。
古いギターに多いパターンですね。
次にストリングリテイナーといわれる弦を押さえつける金具をネジではずします。
ストリングリテイナーって? >> エレキギター用語辞典「ストリングリテイナー」
はずしたパーツはできるだけ小分けにできる容器にしまっておきましょう。
紛失防止です。
ペグのネジは小さいので、精密用の小さいドライバーセットを使いたくなるところですが、小さいドライバーは回す力が弱いため、ネジ山がダメになることが多い気がします。
いつもは100均の安い道具を使うことが多いのですが、ドライバーに関してはホームセンターで買っています。
しっかりとグリップが握れて、ネジの先が細いもの(マグネット付きならさらに良い)を選ぶとよいでしょう。
小さいネジほど、最初の一撃でネジ山終了となりかねません。
しっかりとネジを押さえ、ゆっくり慎重にネジを回します。
回り始めたら、後は外すだけです。
はずしたネジは1本ずつクロスでつまんで、ドライバーで回すことで、ネジの汚れを取ります。
サビも多少はとれますが、ネジがあまりにもサビている場合は、新しいネジに交換しましょう。
ネジ山がつぶれたり、ネジが折れてしまうこともありますが、それぞれの対応についてはまた別の機会に御紹介します。
ネックの清掃
このギターのネックはメイプル指板です。
メイプル指板って? >> エレキギター用語辞典「メイプル指板」
ローズウッドなどと違い、クリアにて塗装されていますので、ボディを磨くのと何ら変わりません。
汚れがひどい場合は、薄めた中性洗剤で軽くふいてください。
最後にもう一度、クロスで水拭きをしておきましょう。
すでに塗装面が割れていたり、ほぼクリア塗装がなくなって、メイプル指板がみるからに汚くなっている場合は、指板の塗装をはがし、下地処理、クリア塗装、フレットの上の塗装とりなど、大変な作業になります。
今回のギターは指板の両端以外はまだ薄くクリア塗装が残っていましたので、汚れも簡単に取れました。
指板以外のヘッドやネック後ろなどもクロスで水拭きしておきましょう。
フレット磨き
このギターはあまり弾きこまれていないため、フレットも1割程度しか減っていません。
弦の下に少しくぼみがあるようなフレットの減り方がありますが、チョーキングしてもさほど違和感はありません。
この程度ならフレットのすり合わせも不要と思います。
フレットにくすみがあるので磨きます。
コンパウンドや、やすりなどで磨く方法もありますが、私はピカールを使用しています。
フレットの両脇をマスキングテープでしっかりと指板を保護します。
フレットと指板の間にすき間がないように丁寧にマスキングをしましょう。
すき間があると磨いた汚れが指板に付着して、しみのように残ってしまいます。
もし指板に磨き汚れがついて、なかなか取れないときは、オレンジオイルなどを少量しみ込ませたクロスで指板を拭き上げるときれいになります。
マスキングがしっかりとできたら、次はピカールを使用します。
ピカールのキャップをしっかりと閉めて、1・2回程度、上下に振るとキャップの内側に少量にピカールがたまります。
キャップを開けて、これを綿棒に少しつけてフレットに塗り込みます。
フレットの頂点に「ちょん」とつける程度でいいと思います。
ピカール専用の乾いたクロスを用意して、そのクロスで10秒から20秒磨きます。
クロス越しに指が摩擦で熱くなってきます。
写真ではわかりにくいですが、磨き終わったフレットは新品の輝きを取り戻しました。
ピカピカです!
基本的に金属部分はピカールできれいになります。
プラスチックや、塗装面にも使用されるとも聞きますが、私は金属限定で使用しています。
ただ「金メッキ」には使用しないでください!!
「銀メッキ」になってしまいます。
ピカールの磨き汚れが残っているとよくないので、先ほどのオレンジオイルで、フレットと指板を拭いておきます。
フレット磨きが終わったら、ペグをヘッドに取り付けます。
ペグは今回はあまり汚れていなかったので、クロスで水拭きだけして元の通り取り付けました。
回路系統の清掃
前にピックガードをはずしていますので、ポット、ピックアップの交換などがない場合、接点復活剤と綿棒を利用して、ポット、スイッチなどの埃や汚れを取り除いていきます。
接点復活剤って? >> エレキギター用語辞典「接点復活剤」
接点復活剤は動画配信サービスの動画を見ていると信じられない使い方をされているのもありますので、数種類の動画を見たり、専門書を購入したりして参考にするようにしてください。
私の場合、ポットの3本の端子が出ているところにポットの口?があり、ここに接点復活剤のノズルを当て、1秒以下噴射します。
そして、ボリュームノブを0から10までの間を何度も回して、抵抗がなくなるまでぐりぐりと回してください。
ポットの中の電気接点の汚れが取れて、正しく通電するようになってきます。
ポット以外にはジャックの端子にも綿棒で接点復活剤をつけて、磨いておきましょう。
ジャックで発生するガリの多くは、「ネジのゆるみ」「ポット接続部分の接触不良」「接点の汚れ」が主な原因です。
ガリって? >> エレキギター用語辞典「ガリ」
汚れを取るだけでもガリが軽減することが多いのでしっかりと清掃し、気持ちよく弾けるように頑張っていきましょう。
接点復活剤の使用方法で、大事な注意点があります!
接点復活剤の注意点は以下の通り。
×ピックアップにスプレーしてはダメ!
×ジャックからノズルを突っ込んでスプレーしてはダメ!
ピックアップに接点復活剤がかかると、ピックアップが壊れる恐れがあるからです。
また、ジャックからノズルを突っ込んでスプレーすると、ピックアップにもかかりますし、キャビティ内が油だらけになってしまいます。
そのため、ピックアップにかからないように、ポットに噴射する際も、クロスでピックアップをガードするようにしましょう。
次にピックアップからそれぞれの部品をはずしていきます。
配線がハンダで固定されていますので、「無理やり」「力を入れて」作業すると、断線等の原因になります。
シングルコイルピックアップの場合、気付かないうちにあの細い配線(コイル)を切断してしまうことがあります。
ピックアップをピックガードから取り外す前に、コイルの配線をよく見て断線しないように作業していきます。
ピックアップの横についているネジを、ピックアップが外れるまで回していきます。
ピックアップがどんどんと下に下がっていく方向にネジをまわしていると正解です。
ピックアップが持ち上がる方向にネジを回している場合は逆となります。
回していると途中でネジがはずれますので、ばねの反動ではずれたことがわかります。
同じようにピックアップ横の6本のすべてのネジをはずします。
ばねやネジが無くならないように、小皿などに置いておくと安心です。
続いて、ピックアップの配線に気を付けながら、六角レンチを用いてボリュームポット、トーンポットをはずします。
さらに、ピックアップセレクターの両脇のネジをはずすと、ピックガードからすべてのパーツがはずれました。
ピックガードにはタバコのヤニや油等の汚れがついていますので、プラスチックの場合は、台所で中性洗剤を使用してジャバジャバ洗います。
水気を拭いたら、少し乾くまで干しておきましょう。
ピックアップカバー、ボリュームノブなどのプラスチック部品は全部、同じように丸洗いしましょう。
特にノブには滑り止めの溝がありますので、この部分は使用済みの歯ブラシなどを使うときれいに汚れが取れます。
これで電気系統の清掃は完了です。
電気系統の復旧
綺麗になったパーツを元に戻していきます。
基本的に、ばらした順番の逆順でピックガードにパーツを組み込んでいきます。
不良部品の交換がある場合は、新しいものを用意しておきましょう。
まず、ピックアップから取り付けていきましょう。
ピックアップの両側のネジに取り付けてあったばねは、取り付けの際、ミスしたらはずれて飛んでいきます。
そのまま紛失とならないように、周辺はしっかりと片付けておきましょう。
私はばねを何度も失くしたことがあります・・・
ピックアップ、ピックアップセレクター、ポットを取り付けていきますが、ピックアップの高さの調整は後で行いますので、ここでは適当な高さで取り付けていればOKです。
ピックアップのばねには、円錐形や、幅が均一な筒状のばねなど、種類の異なるばねがあります。
円錐形のばねの場合で、上下の方向を忘れた時は、ピックガード側に幅が小さくなる方向で取り付けます。
筒状のばねの場合、上下はありません。
次にピックアップセレクターも前後を間違えないように取り付けます。
ここもばらす前の写真と比較して、ねじ止めしてください。
ポットが3つあり、それぞれ配線でつながっていますので、断線に気を付けながら元の位置にポットを差し込みます。
六角形のナット、ワッシャーも取りつけて、指で回して仮止めしておきますが、全てのパーツの取り付けが終わったら、増し締めをします。
増し締めの際に、きつく締めすぎるとポットが壊れますので、注意してください。
また、増し締めの際に、裏面のポットが一緒に回転してしまうと、配線を巻き込んで断線につながりますので、ナットを締めている反対の手で押さえて、固定するようにしましょう。
そうしないと、配線が断線。
そしてジャンクコーナー行き・・・。
と悲しいギターになってしまいますから。
ポットの正しい固定方法の意味が理解できれば、不具合にもすぐに気が付いて対処することができるようになります。
ジャックとスプリングハンガーのハンダもつけて、電気系統の復旧は完了です。
まとめ
今回は、前回に引き続き、分解と清掃について解説しました。
次回はいよいよ、フリスコの修理完結編になります。
最後に弾いてみた動画もありますので、是非次回も読んでくださいね✿
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