いよいよ修理も最終章です。
今回は、修理後の組み立てと各種調整について、説明します。
トレモロユニットの分解と清掃、取り付け
トレモロユニットの分解と清掃
分解と清掃は前回に終わったんじゃなかったっけ?
あ、ごめんごめん、残っとった。
気を取り直して、トレモロユニットの分解と清掃です。
トレモロユニットって? >> エレキギター用語辞典「トレモロユニット」
どの作業でも共通なのですが、分解することに不安がある場合は、必ず分解する前に写真を撮っておきましょう。
トレモロユニットはメーカーによって基本的な造りはほぼ同じです。
しかし、作業途中で組み立て方がわからなくなったり、不安を感じたら写真で確認しましょう。
細かい部品が多く、同じようなものでも高さや長さが異なっている場合があります。
たまに順序もバラバラに組み立てられているものもあります。
もし、間違って組み立てられていることに気付いた場合、そのときに修正してもいいと思います。
では、分解していきます。
初めにトレモロユニットの後ろにある6つのオクターブ調整ネジの一つをはずします。
一度に全部はずすのではなく、一つのネジをはずしたらバネとコマが一緒にはずれますので、コマについている二つのイモネジも外して、ひとセットずつまとめておきます。
後で、元々あったところに戻せるようにしていきます。
ばらした部品は一つずつクロスで水拭きします。
汚れがひどい場合は、潤滑油で磨き上げるとピカピカになりますし、今後のサビ止めにもなります。
特にサビがひどい場合は、紙やすりや、サビ落としを利用しましょう。
トレモロユニットの組み立て
すべてのコマなどを磨いたら、ばらした逆の順序で組み立てていきます。
弦を張った後でオクターブチューニングをしやすいように、1~3弦、4~6弦のコマを写真のように少しづつずらして復旧します。
最終的には下の写真のような並びでオクターブ調整が仕上がることが多いです。
微調整は後でしますので、とりあえずこの形にしておきます。
次にトレモロユニットをはずした6つのネジを使ってボディに留めていきます。
このネジはボディまで締めこまないでください。
ネジを完全に締めこむとアームが動かなくなります。
3ミリ程度トレモロから離して留めてください。
写真のように自由に動けるようネジを締めます。
取り付けが終わったら、ボディ裏のトレモロブロックとスプリングハンガーにバネを掛けます。
バネの張力は、弦を張った後で調整します。
私は写真のように3本がけにしています。
裏ブタがある場合は、全ての調整が終わってからフタをしてください。
ここではまだフタをしません。
ネックの取り付け
次にネックの取り付けです。
注意点として、多少力がいりますが、ボディのネックポケットとネックの角度に気を付けながら、できるだけ無理のない角度を探してください。
無理やりはめ込むと、ネックポケット横に塗装割れのようなヒビが入ることがあります。
どんなに気を付けてもこの部分は細かいヒビが入ることが多いです。
ネックプレートのネジの締め方は、たすき掛けのように交互にネジを締めこんでいきます。
そのほうが、がっちりと固定できるからです。
ギターのボディは木でできているものが多く、同じ場所のネジを締めたり外したりすると穴が大きくなり、固定が弱くなることがあります。
ネジを締める前に一度反時計回りにネジを回して、ネジがボディに「コトッ」と落ち込む場所が確認出来たら、そこから締めこむのがいいです。
このひと手間によって、元々のネジ山とネジの溝が合致して締めこむことになり、穴を広げるのを少しでも防ぐことができます。
弦張り
作業に没頭していまい、弦張りの工程の写真を撮り忘れました・・・。
次の機会に紹介します。。。
調整
ネックのトラスロッド調整
ネック調整は本当に難しいです。
弦を張る前にスチールの定規をフレットに当ててネックを確認するということを、購入時の注意点として仕入れの記事で触れましたが、弦を張ってから確認する方法もあります。
どちらでもいいのですが、私の場合は、弦を張る前であればネックはまっすぐに調整してから弦をはります。
弦を張った後であれば、弦の張力がネックにかかるため、少しだけ順ぞりになるように調整します。
ネックの調整はトラスロッドで行いますが、このギターはヘッド側でトラスロッドを回すことができるタイプでした。
ネックのボディ側で調整するタイプもあります。
今回はほぼまっすぐですが、あえて言えば順ぞり気味でした。
トラスロッドは万能ではありません。
回したら直るというものでもないので、ここでは一般的な調整の方法だけ説明したいと思います。
ネックが順ぞりの場合
ネックが順ぞり過ぎる場合はトラスロッドのネジを締める方向(時計回り)に回します。
定規を当てたり、張った弦で確認しながら締めて調整していきます。
一日で回す角度は180度以下を目安にしてください。
力づくで回したりということは絶対にやめてください。
これ以上回らないときはトラスロッドの締める方向の限界と考えられます。
つまりそれ以上締めることはできないということです。
ワッシャーを追加したりすることでも調整できるようになるとは聞きますが、壊れるリスクが高いように思います。
回しすぎて、急激な変化をネックに与えられた場合、ネック、指板のヒビ割れなどにつながります。
また、ネックは季節、湿度によって順ぞり、逆ぞりとなることもありますので、常日頃からご自分のギターをチェックしておきましょう。
ネックが逆反りの場合
次に逆ぞりの場合、トラスロッドはゆるめる方向(反時計回り)へ回します。
ゆるめたからといって、すぐにネックがまっすぐになるわけではありません。
長い時間をかけて反ったものなので、すぐには戻りにくいと考えてください。
ゆるめた場合はネックが順ぞりになる方向に軽く力を加えたりするのも一つの手段です。
ネックには単に順ぞり、逆ぞりのどちらかということはありません。
ねじれてたり、元起きしたものなど、状態はそれぞれです。
ネックの反りの種類 >> エレキギター用語辞典 「順ぞり」 「逆ぞり」 「元起き」 「波打ち」 「ねじれ」
そのため「少し良くなった」程度での調整でとどめておきましょう。
弦高調整をしてからでも、ネックの調整はできます。
弦高調整
ストラトタイプのトレモロユニットは、一つのブリッジのコマに二つのイモネジが取り付けられており、この二つのイモネジを回すことで、コマの高さ、すなわち弦高の調整をすることができます。
このとき、二つのイモネジの高さを同じにしておきます。
片方だけが高いというのはコマが傾いていますので、演奏中に弦がずれそうな気がします。
弦高は、私の場合、全ての弦高を12フレット上で約2mm程度にしておきます。
弦高が約2mm程度に調整ができたら、確認のため、全ての弦の全てのフレットの単音を出し、チョーキングなども含めて音詰まりがないか確認します。
また、指板にR(アール)があり「かまぼこ状」になっている場合は、写真のようにブリッジ側のコマの高さも指板のRに合わせて調整をしていきます。
音が詰まる場合は、少し弦高を上げることによって、音がきれいに出ます。
ネックのねじれがひどかったり、フレットの摩耗が激しい場合は、弦高調整だけでは対応ができないこともあります。
フレットの打ち換え、すり合わせなどが必要となる場合は、素人では技術的にかなり難しいため、楽器店など専門家にやってもらうほうがいいでしょう。
フレットに問題があるようなギターは購入しないほうが無難です。
(おまけ)ネック取付角の調整
ブリッジのコマを下げきってもまだ弦高が高い。
この場合、イモネジの先端がブリッジのコマから大きくはみ出しており、演奏中に右手があたり痛いということがあります。
逆のケースもあります。
考えられるのは、ネックの取り付け角度が悪いということ。
こういった場合、ネックとボディを取り付ける際に「シム」といわれる紙切れ、プラスチックの板(ピックなども)、ギターパーツとして販売されているものなどを挟んで、ネックの角度を調整することができます。
薄い紙きれ1枚でも、思ったより角度が変わります。
弦高調整がうまくいかない場合、シムを挟む(またはすでに挟んでいるものを取り出す)という方法があることを覚えておいてください。
一度やってみると体感できます。
ネックポケットの奥の方に入れる場合、手前の方に入れる場合など、少しの違いで結構大きく変わります。
今回のギターではシムを挟まなくても調整できました。
オクターブ調整
私が中古で手に入れたギターは、オクターブ調整されているものはほとんどありませんでした。
というと、オクターブ調整がとても難しいのかと思ってしまいますが、それほど難しい調整ではありません。
認知度が低い調整なのかもしれませんね。
オクターブ調整してないとどうなるの?
言葉で説明は難しいけど、音階が上になればなるほど、ちょっと音痴なギターになるんだよね~
楽器屋さんでオクターブ調整を頼むとジャンクギターが買えるほどの料金がかかるようです・・・。
厳密な調整でもないので、ここはしっかりとオクターブ調整をしていきましょう。
では説明していきます。
まず、6弦(E)開放弦でチューニングをします。
開放弦って? >> エレキギター用語辞典「開放弦(かいほうげん)」
6弦(E)って? >> エレキギター用語辞典「弦の順番と名前」
次に同じ6弦の12フレットを押さえて、音を出します。
この時、オクターブ調整ができていれば、ちゃんとEの音が出ているはずです。
開放弦と12フレットでは1オクターブ違いますので、オクターブ調整ができていない場合、ローフレット側のCの音と、1オクターブ上のハイフレット側のCの音が違う音になってしまうことになります。
12フレットの音が開放弦より高い場合、トレモロユニットのオクターブ調整ネジを締める方向に回します。
調整ネジを回すとコマがブリッジ側に少しづつ動いていることがわかります。
弦が切れないように、ほんの少しペグをゆるめてから調整ネジを締めるようにしましょう。
少しずつ締めては、開放弦でチューニングし、12フレットの音と比較して確認していきます。
開放弦と12フレットとも、同じEの音になればOKです。
12フレットの音が低い場合は、オクターブ調整ネジをゆるめる方向に回します。
他の5つの弦も同じように合わせていきます。
開放弦のEの音って、何を基準にすればいいの?1オクターブ違ったりしてしまわない?
基準になる音はyoutubeで「開放弦の音」って検索すると動画がたくさんあるから参考にしてね。
慣れるまでは時間がかかると思いますが、慣れたら1弦から3弦、4弦から6弦のコマの位置が大体このあたりだろうと予想できますので、トレモロユニットを取り付ける際に大体の位置を調整しておくと、時間も手間も大幅に削減できます。
オクターブ調整はそこまで厳密に調整する必要はなく、だいたい合っていればOKです。
トレモロユニットのスプリング調整
トレモロユニットは、ボディ背面側で、スプリングとスプリングハンガーで固定されています。
そのため、スプリングの張力を調整することで、トレモロユニットを自分好みのセッティングにすることができます。
私の場合、トレモロユニットはフロイドローズ以外、アームアップできないようにフローティング(ブリッジが浮いた状態)にはしません。
フロイドローズって? >> エレキギター用語辞典「フロイドローズ」
理由は、チューニングがずれやすくなるからです。
トレモロアームって? >> エレキギター用語辞典「アーム(トレモロアーム)」
このギターは3本のスプリングが付けられていて、私の場合は写真のようにスプリングハンガー側は真ん中の3本のフックにかけ、トレモロブロック側は真ん中に1本、他の2本は外側に取り付けています。
理由はありません、見た目になんとなく安定しそうかなと思うからです。
好きなギタリストがこのように設定していたのでマネしました(笑)
それよりも、スプリングの張力を調整することが大切です。
スプリングハンガーは2本の大きなネジで留められています。
このネジを締めたりゆるめたりすることで、スプリングの張力を調整するようになっています。
スプリングの張力が弱い場合、弦の張力に負けて、アームが引っ張られて写真のようにアームダウンした形になります。
この場合は、スプリングハンガーのネジを締めて、張力を高めます。
私の場合は、トレモロユニットがボディにピッタリと張り付いた状態(ノンフローティング)で、チョーキングした際に少しトレモロユニットが持ち上がるかどうかという程度でスプリングの張力を調整をしています。
スプリングハンガーのネジをいっぱいまで締めこんでも、弦の張力に負けてしまう場合は、バネの本数を追加してください。
ハンガーには5本までスプリングをかけることができます。
逆に必要以上にハンガーを締めこんで、スプリングの張力が強すぎる場合は、アームダウンするときに力が必要となり、アームが使いにくくなります。
程よい着地点どこなのか、いつも悩みます。
フローティングする場合は、スプリングの張力を色々試してみて、自分の好みに合わせてください。
ピックアップ高さ調整
調整もあと少しで完了です。
ギターの弦は中央に近いほど大きく振動しています。
振動が大きいということは、その振動を電気信号に変えている部品であるピックアップも、弦の中央に近いほうのフロントピックアップが、他のピックアップに比べて大きな振動をひらって音も大きくなるということです。
弦の中央では最も音が大きく、中央から離れるほど音が小さくなっていきます。
では、弦の太さでも音の大きさが変わるでしょうか。
1弦と6弦を、それぞれアンプにつながずに弾いたらわかります。
6弦のほうが大きく響きませんでしたか?
1弦<2弦<3弦<4弦<5弦<6弦 の順で音が大きくなります。
このように、弦の端と中央や、弦の太さによっても音の大きさが変わってくるため、音をひらうピックアップの調整が必要になってきます。
つまり、異なる音のレベルを均等にするために、ピックアップの高さをそれぞれ変えていきます。
具体的には、弦の端と中央の音の違いについては、フロントピックアップの高さをリアピックアップの高さより低く設定することで調整します。
ピックアップの高さを高くすると、弦の音を拾いやすくなるということなんだね。
1弦側と6弦側での音の違いについては、1弦側のピックアップを高く設定することで調整します。
センターピックアップは、フロントピックアップとリアピックアップの中間の高さに調整します。
ピックアップの高さを高くするときは、ピックアップを留めているネジを締める方向に回し、逆に低くするときはネジをゆるめるほうに回します。
ゆるめすぎるとピックアップがはずれてキャビティに落ちてしまいますが、はずれた場合はピックガードをはずして、ネジとスプリングを留めなおせばOKです。
ピックアップの高さの基準がわからないんだけど・・高すぎても低すぎても良くないんでしょ?
高すぎると弦の振動でピックアップの表面がけずれたりするからね。
また、ピックアップが高く弦が近くなればなるほど、ピックアップの磁力が弦を引っ張り、チューニングがずれるとも言われています。
適切な高さを調べるためには、最終フレットを押さえ、弦をはじいて、ピックアップの高さを決めていきます。
この場合、ピックアップのボールピースに弦が当たるようではピックアップが高すぎるということになります。
弦がピックアップにあたらないように、ピックアップの高さをネジで調整しながら、適切な高さとなるよう調整していきましょう。
アンプにつないで、耳で音のバランスを確認しながら調整したり、パソコン等に繋いだ場合は、レベルゲージの変動をみることで調整することもできます。
弦がピックアップに当たらないようにだけ注意しながら、音の響き方の好みで調整していってください。
弾いてみた
修理が終わったので、早速弾いてみました❣
実は記事の完成を待ちきれず、先にyoutubeに動画をアップ済みです。
なので既に「これ見たよ~」と思われたかもしれません。
新しい動画を心待ちにしていた貴重なフォロワーさん、ごめんなさい(╯•ω•╰) I’m sorry…
今回の修理を経て、このフリスコというギターが大好きになりました。
弾きやすいし自分ではいい音が鳴っていると思います!
まとめ
以上、このギターの購入から分解清掃(オーバーホール)、組み立て、調整の流れを説明しました。
今回はストラトタイプでしたが、また違うギターでも御紹介できたらと思っています♪
コメント